木村容子
今月は、ボローニャにある聖アントニオS. Antonio di Bologna修道院付属の図書館と文書館で、15世紀のボローニャにおけるフランチェスコ会の活動に関して史料調査を実施した。そして、これまで同様に中世説教に関する先行研究や刊行史料に関して、ボローニャ大学歴史学科図書館などを利用している。
今秋、本プログラム「EU域内外におけるトランストーカルな都市ネットワークに基づく合同生活圏の再構築」主催の合同セミナーがボローニャ大学歴史学科でおこなわれる予定である。筆者も研究報告をさせていただくことになっている。今月はその報告準備を進めた。報告では、15世紀のあるフランチェスコ会説教師の日誌の分析し、カリスマ説教師の陰に隠れて姿のみえにくい、「平均的」説教師に光を当てるつもりである。報告の方向性について、受け入れ先のボローニャ大学マリア・ジュゼッピーナ・ムッザレッリ教授(中世史)からも了解をえた。
今月も、女性と食の歴史を扱ったムッザレッリ教授による新著『女たちの手の中で-食べ物を与える、癒す、毒を盛る』(Maria Giusepina Muzzarelli, Nelle mani delle donne-Nutrire, guarire, avvelenare dal Medioevo a oggi, Roma-Bari, Laterza, 2013)の市民向けプレゼンテーションに参加した(写真1)。
写真1
先月はボローニャ市内の教会でおこなわれたが、今月のプレゼンは書店のイベントとして、書店前の仮設ステージで女優のマリネッラ・マニカルディMarinella Manicardi氏も参加して夜の9時からおこなわれた。ムッザレッリ教授が中世から現代までの女性と食の関わりを解説しながら、史料部分を舞台女優のマニカルデイ氏が朗読するという構成で、演劇的要素もみられた。たとえば、11世紀のヴォルムス司教ブルカルドゥスの贖罪規定書のなかの、夫の愛情を得るために自らの肉体に蜂蜜をぬってパンをこねるといった呪術的な調理をする女性への償いを規定した箇所など、5つほどの史料が紹介された。読むべき「文字」ではなく、朗読された「声」を通して、中世の贖罪規定書や都市の裁判文書に触れるのは新鮮な体験であった。
今月下旬に、ボローニャ近郊の陶器で有名な町ファエンツァで毎年恒例の祭りパリオが開催された。パリオといえばシエナのカンポ広場での地区対抗の競馬が世界的にも有名だが、ファエンツァのパリオは5つの地区を代表する各騎手たちが、流鏑馬のように馬上から的めがけて矢を放ち、成績を競う。筆者は、パリオに先立ち、町の中心広場からパリオのおこなわれる郊外のスタジアムへ向かう、中世風衣装をまとったプロセッションを見物した(写真2、3)。
写真2
写真3