頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム | 若手研究者派遣

頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム~EU枠内外におけるトランスローカルな都市ネットワークに基づく合同生活圏の再構築

若手研究者派遣

派遣報告若手研究者派遣に戻る

月度報告書(2013年12月度)中谷良

中谷良


12月に入るとボローニャはクリスマスムード一色となった。マッジョーレ広場には巨大なクリスマスツリーが設置され、ボローニャのシンボルである「二つの塔」もイルミネーションで装飾されている。お店のショーウィンドウの前で足をとめ、クリスマスの準備を真剣に考えあぐねる人々も多々みられた。    


写真1 イルミネーションで装飾された「二つの塔」
 

写真2

12月5日に指導教官のベラルド・ピオ先生との面会の機会が得られ、その時に自身の研究の関連文献を紹介してくださった。またこの機会にピオ先生に図書館の案内(図書館利用のための登録、事典等の紹介)もしていただいた。

幸運にも先生の研究室には私の研究に必要な刊行史料である『アンジュー朝文書局発給帳簿I registri della cancelleria angioina』(現在50巻まで刊行中)が配架されていた。私の研究対象であるルチェーラのムスリム共同体は内部の行政文書が著しく欠如しているため、この王の発給した書簡が唯一の重要な史料となる。今後この刊行史料を3巻ずつ先生からお借りしてその史料の読解を行っていこうと考えている。史料のわからない箇所はピオ先生の研究室を訪れ教えてもらい史料読解の精度をあげていく。

12月18日(水)にピオ先生とお会いした時には、ボローニャ大学で行われている授業に出席したい旨を伝えた。私は今後自身の研究に不可欠な『古文書学paleografia』の授業の聴講を願い出たところ、すぐに担当教授へのコンタクトをとっていただいた。ただ『古文書学』の授業は2月19日から始まるということである。授業を理解するために、それまでにイタリア語会話能力の向上を行っておかなければならない。12月中にもう一度ピオ先生のもとを訪問したかったが、12月後半から1月初旬まで大学は休みになるらしく、今度先生とお会いできるのは1月7日以降である。
 

写真3 『アンジュー朝文書局発給帳簿』

イタリア語の会話能力向上のために現在イタリア語の語学授業にも出席している。ピオ先生との面談において自身研究を十二分に伝えるためにも必要不可欠である。

ボローニャには、外国人のために無料の語学授業を行っている協同組織が数多くある。しかしながら、私がボローニャに到着した時、ほとんどの組織の授業登録期間が終了している時期で、さらに無料というだけあってどこの授業もすでに生徒で満席状態であった。そんな中、幸運にも一件だけ受け入れていただける組織があった。この組織は現在サンタマリア・デッラ・ミゼリコルディア教会 (Chiesa Cattolica Parrocchiale S. Mariadella Misercordia)でイタリア語授業を週3回開催している。実際その授業に出席してみると、生徒の数が5人前後であるのに対して教師3人の指導体制であり、授業内容もしっかりしていた。生徒の多くは労働者であり、彼らの出自は多種多様である。彼らや教師たちとの会話時間は確保されており、私にとって非常に充実した授業となっている。


写真4 ボローニャのサンタマリア・デッラ・ミゼリコルディア教会
2014/01/15 15:00