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月度報告書(2014年2月度)中谷良

中谷良

今月は1月度に引き続き、研究文献と史料の収集・複写を行った。先月までは歴史学科の中世史図書館を中心に調査を進めていたが、今月はボローニャ中の図書館を対象に史料・文献調査を行った。

ボローニャの市立図書館や大学付属の図書館はボローニャの町中に分散している。市立図書館で一番有名なのはおそらくネットゥーノ像の前に位置するサラボルサ図書館(Biblioteca Salaborsa)であろう。比較的最近に新設されたこの図書館は連日市民によってにぎわっている。ただ所蔵されている図書も市民向けのものが大半で、私が利用することはほとんどない。私がよく利用するのはアルキジンナージオ図書館(Biblioteca dell’Archiginnasio)の方である。ここもボローニャ市が管理している図書館であるが、サラボルサ図書館より貴重な史料や文献が多く所蔵されている。アルキジンナージオ図書館はアルキジンナージオ宮殿の一部であるため、観光客も多く出入りしていた。

大学付属の図書館に関しては、大学総合図書館(Biblioteca universitaria di Bologna)、人文学科図書館 (Biblioteca di Discipline Umanistiche)、古代史図書館 (Biblioteca di Storia Antica) 等を随時訪問し、史料・文献調査を行った。


写真1: アルキジナジオ図書館。宮殿内部には博物館も併設されている。


写真2: 大学総合図書館入口。こちらも博物館が併設されている。

2月19日から『古文書学 (Paleografia Latina e Diplomatica)』の授業が始まった。担当教授はボローニャ大学のLorenza Iannacci先生で、生徒が20人弱の小規模な授業である。週に3回(水曜日・木曜日・金曜部)授業が展開される。最初の授業の日には、実際の古文書を触れることができた。実際に触ってみると、紙の厚さ、重さ、大きさ、そこに書かれている文字の大きさや形、炭の濃淡にも様々な違いがあることに気づいた。授業の前半部は古文書学に関する基礎的な知識を中心に話が進められ、後半は実際の古文書のコピーを生徒とともに読んでいく授業形態であった。

前半の授業の講義に関しては、イタリア語を正確に聞き取ることも私にとって難しかった。授業後に先生に質問をしにいったが、やはりそれでも先生の説明が聞き取れない部分が多かった。そのため指定されている参考文献を適宜読んで、授業内容の理解の向上を図っていくつもりである。

反対に、古文書を実際に読んでいく授業の後半は前半部に比べれば理解しやすかった。おそらくは初学者のために平易な文書を選定していただいたためだと思うが、省略記号や文字自体が比較的規則的である中世の古文書それ自体の特質によるものであろう。そうだとしても授業が始まる前に事前に予習しておかないと、授業についていくのは大変であった。出席している学生たちも初めての古文書には四苦八苦している様子であった。

いずれにせよ、この機会を十分に活用し古文書に対する基礎的な素養を養っておくべきだと考えている。自身の研究に従事していれば、古文書を読解する場面は必ず遭遇するはずであるからである。


写真3: 授業の教材。教材は大学近くのコピー屋 (copisteria)で入手する。

写真4: 授業の様子。グループで史料読解を行っている。
2014/04/21 17:00