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月度報告書(2014年6月度)犬童芙紗

犬童芙紗


ビーレフェルトは1日の間でも、天候の変化に富んでいる。朝は晴れていても、午後になって天気が急変し、雨が降り出すということは珍しくない。また、6月になり、日中は20度前後まで気温が上がる日も増えてきたが、朝は10度前後まで下がることもある。雨や曇りの日は気温が上がりにくく、天気が悪くなると気温が下がる。外出する際には、常に折り畳み傘と上着を持ち歩いたほうがよい。


写真1:突然の大雨に見舞われた日もあった。

さて、筆者は6月初旬に、ハンブルク州立・大学図書館(Staats- und Universitätsbibliothek Hamburg Carl von Ossietzky)およびハンブルク州立公文書館(Staatsarchiv Hamburg)にて史料調査を行った。ビーレフェルトからハンブルクまでの所要時間は、利用する列車にもよるが、2時間半から3時間ほどである。

筆者は、今回は、往路はビーレフェルトからハノーファーまでIC(Intercity, ドイツ国内の都市を結ぶ特急列車)に乗り、ハノーファーでICE(Intercity-Express, ドイツおよびヨーロッパ各地の主要都市を結ぶ超特急列車)に乗り換えてハンブルクに到着した。復路はハンブルクからオスナブリュックまでICに乗り、オスナブリュックでWFB(WestfalenBahn, ミュンスター、オスナブリュック、ビーレフェルト、パーダーボーン等の都市を結ぶ私鉄の普通列車)に乗り換えてビーレフェルトに帰着した。往路の所要時間は2時間半、復路は3時間であった。


写真2:ハンブルク中央駅は、ドイツ鉄道の主要ターミナル駅の一つでもあり、広大である。
駅は常に多くの列車と旅行者でごった返している。


写真3:ハンブルク中央駅の外観。駅のホールの全長は150メートルもある。

ハンブルクでの史料調査についてであるが、まず、州立・大学図書館において、混声合唱協会「ハンブルク・ジングアカデミー」(Hamburger Singakademie)の活動が記録された議事録(Protokoll)や演奏会に関する記録等の一次史料を収集した。ジングアカデミーの一次史料は、図書館の一般閲覧室の奥のほうにあるHandschriftenlesesaal(手書き史料のための閲覧室)においてのみ閲覧することができる。

筆者は以前、史料調査を実施した際に、ジングアカデミーの史料目録一覧を控えていたため、今回閲覧したい史料の項目をすでに把握していた。そのため、Handschriftenlesesaalを訪問する数日前に、メールで訪問日と閲覧したい史料の項目を伝え、あらかじめ準備していただけた。

Handschriftenlesesaalをその年に初めて利用する際には、手書き史料と貴重印刷物を利用するにあたっての留意事項が記されたプリントと特殊資料の利用申請書が渡される。利用希望者は、申請書に、氏名や連絡先、研究テーマ等を記入して提出する。Handschriftenlesesaalにおける主なルールは、鉛筆以外の筆記具を一切使用しないこと、史料に素手で触れないこと、飲料水等の水気のあるものは一切持ち込まないことである。ちなみに、ハンブルク州立・大学図書館では、一般閲覧室への飲料水の持ち込みは可能である。

Handschriftenlesesaalの史料の複写を希望する際は、しおりで史料の複写箇所を指示し、Handschriftenlesesaalの受付に、所定の申し込み用紙を添えて注文する。自分でデジカメ等で撮影することは許されていない。注文した史料の複写は、図書館の中の複写やスキャンを担当する部門Medienwerkstattが行う。複写代は、A4の白黒で1枚0,25ユーロである。CD代1,00ユーロ支払えば、全データを1枚のCDに記録してもらえる。紙媒体にするとかさばること、CDにまとめれば史料の保管に広いスペースを要さないことを考慮すれば、CDへの記録を依頼したほうがよい。

史料の複写物は、Medienwerkstattで直接引き取り、その場で代金を支払うか、もしくは、後日郵送してもらい、後から銀行振込で代金を送金することも可能である。史料の複写の完成には2週間から3週間ほどかかるため、郵送を依頼した。郵送の場合は、郵送代もかかる。
 

写真4:ハンブルク州立・大学図書館。
SバーンS11, S21, S31線のDammtor駅から徒歩10分ほどの場所にある。


写真5:ハンブルク州立・大学図書館正面玄関

一方、ハンブルク州立公文書館では、19世紀後半から20世紀初頭にかけてハンブルクで活動していた音楽教師・批評家のエミール・クラウゼ(Emil Krause)が1914年から書き記し始めた、ハンブルクの音楽文化史に関する手稿Hamburg als Musikstadtを閲覧した。クラウゼはハンブルク音楽文化史を、中世から20世紀初頭までのハンブルクにおいて音楽文化活動を担っていた組織や演奏家に焦点を当てて書き記しており、職業音楽家や職業オーケストラだけでなく、ジングアカデミーをはじめ、19世紀以降、相次いで設立されたアマチュアの音楽愛好家による合唱協会にもかなり言及している。当時の音楽文化活動に関する同時代人による証言として、非常に興味深い史料である。


写真6:ハンブルク州立公文書館。
1998年に建築された現代的な建物であり、中にある古い文書とのギャップを感じる。


写真7:ハンブルク公文書館。別の側面より撮影。
ハンブルク公文書館は、以前は市中心部のABC-Straßeにあったが、1998年に、現在のハンブルク中央駅から東方へ6駅目、地下鉄U1線Wandsbek Markt駅から徒歩5分の場所にあるKattunbleicheに移動した。

ハンブルク州立公文書館は、過去に利用したことがあれば、改めて利用登録手続をする必要はなく、閲覧室のカウンターに置いてあるリストに名前を記入するだけで利用させていただける。公文書館所蔵の文献、新聞、雑誌は、インターネットの公文書館公式サイトのオンライン・カタログで資料の有無および資料番号を検索することができる。一次史料の目録も、一部はPDF化して公式サイトに掲載されており、資料番号を調べることができる。

公文書館の閲覧室の開室時間は、月・火・水曜日は10時から18時まで、木・金曜日は10時から16時までである。閲覧を希望する所蔵資料は、所定の注文用紙(Bestellschein)に資料名と資料番号、閲覧希望日時を記入して閲覧室のカウンターに提出する。公文書館の資料を渡していただけるのは、午前10時と午後13時30分の1日2回のみである。午前10時からの閲覧を希望する場合は前日13時30分までに、午後13時30分からの閲覧を希望する場合は当日の午前11時15分までに、カウンターに注文用紙を提出する。閲覧資料の注文用紙は、公文書館の公式サイトにもエクセルおよびPDFで上がっており、それらに必要事項を記入し、Eメールに添付して、あるいは、ファックスや郵送で注文することも可能である。Eメール、ファックスおよび郵送での注文は、閲覧希望日から2開室日前まで受け付けられる。筆者は今回、Eメールで注文するという方法をとった。

資料の複写に関しては、ハンブルク州立公文書館は、デジカメ等による資料の撮影を禁じている。史料の複写を希望する場合は、受付に所定の申し込み用紙を提出して、複写を注文する。公文書館所蔵の資料の複写は、Elbe-Werkstättenに外注しており、その後の完成した複写物の受け取りと複写代の支払はElbe-Werkstättenとの間で行う。複写代は、A4の白黒で1枚0,60ユーロである。CDへの記録を希望する場合は、複写枚数分の代金に10,00ユーロ上乗せされる。公文書館も複写の完了には2週間ほど要するため、郵送を依頼した。

今回のハンブルクでの史料調査において、筆者はジングアカデミーの活動に関する膨大な情報が記録された史料を収集することができた。しかし、Arbeitsbereichtreffe(Epple教授の講座に所属する研究員やドクトラントの定期的な会合)において、あるドクトラントも指摘していたことであるが、これから考えなければならないのは「収集した史料をどのように扱うか」である。Epple教授も、これはどの研究者にとっても重要で難しい課題であるとおっしゃっていた。今回の史料調査の成果を、夏の間にまとめ、報告できる形にしたい。
 

写真8:ハンブルクの中心部を占めるアルスター湖(Alstersee)の畔より。
アルスター湖は、エルベ川支流を堤防でせき止めてつくられた湖であるが、エルベ川に近い市中心部の内アルスター(Binnenalster)とその北側に広がる外アルスター(Außenalster)に分かれている。
こちらは内アルスター。写真奥に見える4つの尖塔は、左から聖ヤーコプ教会、聖ペテロ教会、市庁舎、聖ニコラウス教会である。


写真9:アルスター湖から噴き出ていた噴水に、きれいな虹が映し出されていた。


写真10:遠くに見える、Sバーンが走りすぎている橋Lombardsbrückeの奥のほうに、外アルスターがある。


写真11:Jungfernstieg沿い、内アルスターの畔に建つアルスターパビリオン(Alsterpavillon, カフェ・レストラン)の近くより撮影。
この日は天候が穏やかであったせいか、湖の畔でくつろぐ人びとで賑わっていた。
2014/07/24 15:00