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頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム~EU枠内外におけるトランスローカルな都市ネットワークに基づく合同生活圏の再構築

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月度報告書(2014年6月度)中谷良
6月のボローニャは例年より気温もあがらず、過ごしやすい日々が続いた。6月の試験に合格し卒業する学生たちが再び「dottore, dottore」と歌いながら、各自で友人たちや家族と卒業を祝う姿が再び見られた。

ボローニャのマッジョーレ広場では毎晩市民に対して映画が無料で放映され、広場全体をうめつくすほどの人が集まっていた。約一ヶ月にわたって一日一本ずつ放映されるこれらの映画の中には、日本のアニメも含まれている。また24日にはボローニャの各地の教会や広場で音楽祭が催され、中心街が音楽で満ちあふれた。このように都市全体を会場として市民に提供されるイベントは、日本ではなかなか行われないため非常に新鮮に感じる。


写真1. マッジョーレ広場での映画上映。


写真2. 音楽祭の路上演奏。

研究に関しては再びナポリの国立古文書間に赴き史料調査を行った。前回調査できなかったアンジュー家の文書局発給登録簿から書き写されたシコラ(Sicola)の目録集を中心に読んでみたが、やはりまだ正確に読むには苦労を要する。とにかく今は目録集の必要な箇所を写真撮影して、日本でじっくり読んでいこうと考えている。その他にまだ今回の調査では不十分なところもあり7月度も引き続きナポリへの史料調査を続ける予定である。

聞くところによると、同古文書館では南イタリアの古文書に対する知識や読解力の向上を目的として古文書学(paleografia e diplomatica)の授業が開講されているという。中世の古文書のみならず近現代の文書史料をも対象としたもので、こうした授業への参加は私にとっても有益であったが、すでに登録期間が過ぎている上に2年にわたる長期の授業であったため断念せざるを得なかった。次の機会があったときには参加してみたいと思う。


写真3. 古文書館での調査成果。
シコラの追加目録集 (supplementum ad repertorium)

今月ボローニャではピオ先生との日程があわず、お会いすることができなかった。ナポリでの史料調査などのことについては7月度の面談で相談しようと考えている。一方でナポリ国王カルロ2世期の研究に関しては、以前から私が興味をいだいていた研究者のセレーナ・モレッリ (Serena Morelli)先生に対してメール送り研究の助言を求めた。カゼルタにあるナポリ第二大学 (Seconda Università degli studi di Napoli)でアンジュー朝初期の地方行政の研究をしている先生である。親切にもすぐに返信をいただき、13世紀後半ナポリ王国の研究において参照すべき研究文献に関して有益な情報をいただいた。研究文献が多く何から手をつければよいかわからなかった状態であったため、こうした情報は貴重である。
2014/07/24 15:00