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頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム~EU枠内外におけるトランスローカルな都市ネットワークに基づく合同生活圏の再構築

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月度報告書(2014年7月度)犬童芙紗

犬童芙紗


7月1日、IBZ(Internationales Begegnungszentrumの略称)に転居した。IBZは、もともと農家だった建物を改築して、1982年以降、外国人客員研究員(Gastwissenschaftler)に滞在場所として提供されるようになったゲストハウスである。ゲストハウスには、単身者用と家族用合わせて全部で21の部屋がある。各部屋にシャワーとトイレがついており、キッチンと洗濯機・乾燥機は共有で利用する。IBZの外装は昔ながらの農家の雰囲気を残しているが、内装は近代的な様式に改築されている。部屋にはあらかじめ家具が備え付けられており、シーツやタオルも用意されている。使用済のシーツやタオルは、2週間に1度、火曜日の18時から19時の間に管理人(Hausmeister)が指定する場所に持参すれば、交換してもらえる。また、IBZの洗濯機と乾燥機を利用するには、専用のコインが必要であるが、コインは、シーツ・タオルの交換時に、管理人から購入することができる。コインは、洗濯機用と乾燥機用で別々になっており、それぞれ1枚1,50ユーロである。

IBZは、今年の2月中旬、渡独前に、大学の国際課のポータルサイトInternational Portalを通じて見つけ、IBZを管理しているHausverwaltung OWL-Hoschschulserviceの担当者にEメールで問い合わせ、7月1日から入居可能な部屋があるという返答を受けて、予約した。7月からIBZに空室が出るということで、最初の3ヶ月間は中央駅から徒歩10分の所にあるKolpinghausに滞在し、その後、大学へのアクセスにより便利なIBZに移り住むことに決めた。

KolpinghausからIBZへの転居に伴って、6月末から7月初めは、転居のための荷造り、新居への荷物の移動、各所への新住所の届け出に追われた。筆者が7月1日に転居することは、学科の秘書が覚えていてくださり、その2日後に顔を合わせた際、役所や銀行、および大学の図書館や事務等、これまで自分が住所を届けている所に、新しい住所を届けるよう念を押された。市役所の住民課への新住所の届け出は、転居翌日に済ませていたが、銀行や大学にはまだ届けていなかった。秘書の気遣いに感謝した次第である。銀行、大学の図書館、および大学の外国人研究者の窓口となっているWelcome Centreにも、転居した週に新住所の届け出を済ませた。

住まいの移動には大変な労力を要するが、ビーレフェルト滞在中に2カ所での生活を味わえるという楽しみを享受することができる。まず、最初の3ヶ月間滞在したKolpinghausは、中央駅から徒歩10分の場所にあり、市の中心部の繁華街に近く、様々な店舗へのアクセスに便利であった。大学へは中央駅から電車で往復していた(片道7分)。それに対して、7月から住んでいるIBZは、大学との間を徒歩で往復することができ、電車の待ち時間を気にする必要がない。また、IBZは、市の中心部から離れているため、周辺の環境は非常に静かである。しかし、アクセスの良い店舗の数が限られていることに不便を感じることもある。それでも、IBZから約15分歩いた場所に、月曜日から土曜日まで毎日8時から21時まで開店しているスーパー、および薬局やパン屋はあるので、普段生活して行くのに困ることはない。それらの店で手に入らないものは、時折、中心部に出かけて、手に入れれば良い。


写真1:7月から筆者の滞在先となったIBZ


写真2:IBZ前の通りより大学キャンパスを臨む

ところで、現在、ビーレフェルト大学は、メインビルディングの立て替え工事に備えて新築されたX棟への機能の移転が順次進められている。メインビルディングのメンザ(学生食堂)の営業も7月18日で以って終了し、7月21日にX棟の1階(Erdgeschoss)に新しいメンザがオープンした。

 
写真3:7月18日、メインビルディングの旧メンザ最終営業日の様子


写真4:旧メンザ最終営業日には、利用者にワインないしジュースが振る舞われた。

 
写真5:7月21日、旧メンザのシャッターは、開店時刻の11時半になっても閉じたまま。


写真6:7月21日、新メンザ営業開始。右側のパネルにその日のメニューが掲示される。


写真7:新メンザのカウンターの前に並ぶ人びと。
各自が希望するメニュー(定食)のカウンターの前に並んで、受け取るというシステムである。
その他、サラダバーやパスタバーもある(量に応じて値段が決まる)。
メンザの営業時間は11時半から14時半。毎日7,500食が提供されているという。

 
写真8:メンザのホールの様子。
座席は全部で1,900席あり、ビーレフェルト大学のシンボルカラーである緑色が取り入れられている。

X棟は、完成した箇所から順次、使い始められている。1階(Erdgeschoss)の講義室や演習室の一部は、すでに昨年の冬学期(Wintersemester 2013/2014, 10月開始)から使用され始めていたという。今年の5月には、3階から5階(Obergeschoss 2階から4階)に歴史・哲学・神学部、社会学部、BGHS(社会学部と歴史・哲学・神学部がドクトラントの国際的な研究を促進するために共同で設置した大学院Bielefeld Graduate School in History and Sociologyの略称) が、2階(Obergeschoss 1階)にX棟に移転した学部の専門図書館が入居する。そして7月に、メンザの営業が開始した。だが、X棟の内部には、まだ完成していない箇所もある。ゆっくりと時間をかけて工事を進め、使えるようになった所から使い始めているという感じである。


写真9:2階(Obergeschoss 1階)の図書館のそばにはCafébarができる予定であるが、まだオープンしていない。

 
写真10:2階(Obergeschoss 1階)には、まだ整備を進めている最中の部屋もある。

研究に関しては、筆者は現在、6月にハンブルクで収集した史料の読解を進め、19世紀末から20世紀初頭におけるハンブルク・ジングアカデミーの活動実態を構築しようと試みている。筆者が現在読み進めているジングアカデミーの議事録は、19世紀から20世紀前半にかけて、歴代の書記が手書きで執筆したものである。手書き史料は、筆記体で書かれており、活字に比べると読みにくく、読む速度が遅くなる。手書きの書体は、個人の癖によっても様々であり、慣れないうちは解読するのが難しい。しかし、一見では読めなかった文字も、その前後の文脈を考慮し、単語や文法の知識を駆使して推理しながら、解読されていく。記録者によっては非常に読みにくく、辟易することもあるが、その筆跡に慣れてしまえば、解読が面白くなり、個人による筆跡の違いを楽しむ余裕も出てくる。


写真11:大学近くの通りVoltmannstraßeにて


写真12:ビーレフェルトは夏真っ盛り。色とりどりの花が咲き乱れている。
2014/08/22 13:10