中條健志
7月29日にパリに到着し、研究活動を開始した。とりわけ、前回の滞在時(1~3月)に収集した資料の分析および論文執筆がおもな活動となった。分析にあたっては、本研究プログラムで購入した文献(批判的談話分析の理論にかんするもの)を参考にした。そこでは、国立移民歴史館開館(2007年10月10日)をめぐる主要紙の報道記事を談話資料に、歴史館の意義がどのように語られ、「移民」(immigration)がフランスの歴史にどのように位置づけられていたのかを検証した。なお、執筆作業にあたっては、派遣先機関の複数の研究者よりアドヴァイスを受けた。『都市文化研究』(17号)に論文として投稿する予定である。
参加した主なイヴェントとして、20区を中心にパリ東部で社会的参入・伴走支援をおこなう市民団体HED(Hébergement différent)主催のベルヴィル地区スタディーツアーがある。代表者によるガイドのもとで、いわゆる「中国人街(Quartier chinois)」とよばれる界隈を、レストランや食料品店などを見学しながらフィールドワークをおこなった。そこでは、さまざまな地域に出自をもつ人びとから構成されるベルヴィルを、一括りに「chinois」の地域とみなせないことが明らかにされた(写真1~6)。
写真1
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6
移民歴史館(写真7)では7月に常設展における展示方法および展示物の一部がリニューアルされた。そこで、更新にかんして歴史館のホームページから、また同館の関係者へのインタビューを通じて、その内容について情報を収集した。主な変更点は、音声ガイドおよびタッチパネル式ディスプレイのリニューアルと、近年収集したあらたな展示品の公開である。常設展へは来月の訪問を予定している。
写真7