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頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム~EU枠内外におけるトランスローカルな都市ネットワークに基づく合同生活圏の再構築

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月度報告書(2015年2月度)中條健志

中條健志


2月3日に、国立移民歴史館でおこなわれた研究集会『アルメニア移民(19-20世紀):空間、断絶、再布置化』に参加した(写真1)。そこでは、ゾヴィナール・ケヴォニアン氏(パリ第10大学)とアヌーシュ・クント氏(ポワティエ大学)による、アルメニアからの移住者の歴史に関して研究報告および討議がおこなわれた。

主に扱われたのは、ジェノサイド(19c末~20c初)による各国への移住現象である。フランスとの関連では次のような指摘があった。すなわち、アルメニア移民はナンセン・パスポートを通じての難民としての移住者ではあったが、とくに第一次大戦後の労働力人口減少を受け、当初フランス政府は彼(女)らを労働力とみなしていたこと――そこでは、国籍付与は検討されなかった――、冶金業界が積極的な受け入れをおこなったこと、移住した時期により「定住」か「帰国」かをめぐって意識が異なり、世代間の対立が多かったこと、などである。また、様ざまな国への移住者を一様に「アルメニア移民(現象)」として捉えることの問題性も指摘され、自身の研究との関連から同現象を考える貴重な機会をもつことができた。


写真1

2月14日には、第10回「反植民地・レイシズムサロン」に参加した(写真2)。2011年度のROVプログラムによる海外渡航時、および発表者として参加した昨年2月に続き3回目となった。市民団体のスタンド・コーナーでは、本プログラムを通じて交流関係が築かれた関係者へのインタビューおよびそこでの資料収集を実施した。その他には、『ジャン・ジョレスと脱植民地化の思想』、『FRONTEX(欧州対外国境管理協力機関)によって脅かされる移動の自由』(写真3)、『「シャルリー・エブド」後の世界』をテーマとしたシンポジウムに参加した。


写真2


写真3

主なイヴェントは以上のものであるが、当月度は、翌月におこなわれるベルギー研究会での報告準備と、派遣先での国際研究集会の準備に多くの時間を充てた。後者については、フランス側報告者4名との打ち合わせを繰り返し行い、プログラム作成と会場準備をすすめた。
2015/04/08 12:00